縁の下の力持ち・棘下筋
『棘下筋』(キョクカキン)と聞いて、「ああ、あれね」とイメージできる人は、かなりのマニアでしょう。
棘下筋は、肩甲骨に張り付く筋肉で、肩関節を安定させるローテーターカフの一つです。
肩関節は人体のなかで、最も可動域が広く、ぐるんぐるん動きます。
その反面、人体で最も外れやすい(脱臼しやすい)関節でもあります。
そんな肩関節を守る四天王が、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋。
上腕骨を肩甲骨に引き寄せて、外れないように全員でホールドしてくれています。
棘下筋は、肩甲骨を横断する出っ張り、肩甲棘の下を埋める筋肉です。
テニスのストロークなどで腕を引くときに、ぎゅっと収縮して働いたり、
腕を一定のポジションに保持する働きをする筋肉です。
薄いボリュームに対して活動を強いられる場面が多く、
知らず知らず負担の溜まりやすい部位のひとつでもあります。
野球の投球動作などで、肩が外れないように踏ん張ったり
PC作業時には腕の位置を保つのに、常に張り詰めたり、生活するうえで引っ張りだこな筋肉です。
捉えどころのない腕のだるさやしびれは、この棘下筋から来ることもあります。
ほかにも、棘下筋自身は肩の後ろにあるにも関わらず、
肩の前部や関節内部の痛みを引き起こすトリガーになったり、
背中に手を回すことが困難になったり、上着の脱ぎ着がつらくなったりと、
肩関節周囲炎、いわゆる四十肩/五十肩の原因にもなりえる厄介な筋肉です。
残念ながら、この棘下筋を(単独で)効果的にストレッチすることは難しく、
押圧などによる刺激で、凝り(トリガーポイント)を解消するのが現実的です。