えにしの施術の"核"となる"トリガーポイント"についてご説明します。
少し堅苦しいお話になりますがお付き合いください。

痛みとその場所

"痛み"は実に不思議なものです。
日常において感じる痛みは数多くありますが、そのなかでも例えば、擦り傷や切り傷、怪我などは、
痛みの元がはっきりしています。

ところが痛みは、必ずしも感じているその場所に原因があるとは限りません。

離れたところに痛みなどを飛ばす…それがトリガーポイント。
トリガーポイントは軟部組織(骨以外の組織:筋肉、筋膜、骨膜、腱、靱帯、関節包、皮膚など)のなかでも、
とりわけ筋・筋膜に最もできやすく、索状硬結(筋肉の異常収縮・しこり)として触知できます。

トリガーポイントの概念図

"トリガー"ポイントの名前が表すように、この硬結(異様に凝った部分)が、発生部位から離れた部分に、痛み・しびれ・違和感などを飛ばす"トリガー=引き金"となります。



また一つのトリガーポイント(原発性/キー・トリガーポイント)が引き金になり、
更に新たなトリガーポイント(続発性/サテライト・トリガーポイント)を形成させる、
チェーンリアクション(連鎖反応)という悪循環も起こしてしまいます。

トリガーポイント と痛み

トリガーポイントによって遠隔部位に飛ばされた痛みは関連痛と呼ばれます。
関連痛の一例として、首から肩のラインの筋肉、僧帽筋に生じたトリガーポイントが引き起こす
目の奥から側頭部にかけての頭痛が挙げられますが、これなどは案外経験している方もいるのではないでしょうか。
いわゆる、肩こりからくる頭痛です。

僧帽筋のトリガーポイント
赤い領域が、×印のトリガーポイントによって引き起こされる関連痛領域



このケースでは、何もしなくても頭痛を感じる場合をトリガーポイントによる「自発的関連痛」、
トリガーポイントを押すことで初めて頭痛が促される場合を「他発的関連痛」といいます。

自発的関連痛の原因となるトリガーポイント(=活動性トリガーポイント)のほうが、
他発的関連痛のトリガーポイント(=潜在性トリガーポイント)よりも硬結が強く、
相対的に重症だと言えます。

痛み・辛さを感じて病院で検査を受けてみたけど、どこにも異常が見つからない、という場合、
その原因はレントゲン等の画像検査には映らない、筋肉の硬結による自発的関連痛かもしれません。

トリガーポイントは異常に凝り固まった筋肉・筋膜のしこりなので、血液も流れにくく、血行不良を起こしています。
それゆえに、血流を回復させることが治療の第一歩になります。


 

トリガーポイント の判断基準

トリガーポイントはここまでお話ししたように、離れた部位に痛みを飛ばしたり、
トリガーポイントの連鎖反応という悪循環を引き起こしたりする存在です。

そればかりか、時として、痛みのみならずしびれを生じさせることもある、放っておきたくない厄介な存在です。

そんなトリガーポイントには、いくつか判断の基準となる項目があります。
 1.索状硬結(硬いロープ状のしこり)
 2.強烈な圧痛点
 3.圧痛点を圧迫すると関連痛が生じる
 4.筋力低下や可動域制限
 ほかにも局所痙攣反応や自律神経反応(発汗・立毛(鳥肌が立つ))なども挙げられます。

※参照 The Clinical journal of pain.2020 Dec;36(12):955-967. doi: 10.1097/AJP.0000000000000875.
    Myofascial Trigger Points Then and Now: A Historical and Scientific PerspectivePM R. 2015 Jul; 7(7): 746–761.

またある研究によると、全身に点在するトリガーポイントと"ツボ"の位置は、約7割が一致しているとされています。
トリガーポイントは、アメリカのトラヴェルとシモンズという2人の人物によって臨床研究が重ねられ、まとめ上げられました。

西洋と東洋の違いはあっても、トリガーポイントもツボもどちらも扱うのは同じ人間の体、
結果が似通ってくるのは大変興味深いですね。

トリガーポイント への施術

トリガーポイントを治療するには、ストレッチ・鍼・生理食塩水の注射・押圧などの方法が用いられます。

えにしでは、その中の主に 押圧【虚血圧迫法】を用いて施術していきます。

体は、一時的に血液の流れが阻害されるとリバウンド現象として、その部位により多くの血液を流そうとします。
トリガーポイントは筋収縮によりもともと虚血状態に陥っていますが、そのトリガーポイントを押圧することにより、
一時的に虚血状態を助長し、圧を解放したあとの大きなリバウンド効果を利用します。

さらに、強めの圧で刺激することによって痛みの閾値を高め、痛みの感覚受容を低下させる効果も得られます。

虚血圧迫の効果

虚血圧迫法がトリガーポイントに効果を発揮するということは、
トリガーポイントにまで成長していない一般的なこりにも、もちろん有効です。

虚血圧迫→血行アップ すれば、様々な効果が期待できます。

体(細胞)が活動すればその産物として老廃物が排出されますが、
血行が悪ければいつまでも回収されずに老廃物は細胞内にとどまったままになります。

また、そもそも細胞が元気でいるためには酸素や栄養素が必須ですが、
血行不良では必要物資が届きません。

生存に必要なものが届かず、不要な廃棄物が溜まる一方では細胞が衰えていきますし、
必要物資が足りなければ新陳代謝も進みません。

さらに血液は、体のあちこちで作用するホルモンや免疫細胞を運ぶという大切な役割も担っていますので、
血行不良は不調や病気の元となりかねません。

また血管の収縮は、血管と並走するリンパ管を刺激してリンパ液の流れをサポートしていますので、
血行不良はリンパの滞りと表裏一体です。

けれども、ひとたび滞っていた血流が改善すれば、それまで足踏み状態だった
新陳代謝もはかどり、細胞が息を吹き返し若返ります。
ホルモンや免疫細胞も、適切なタイミングで・必要な場所で仕事をしてくれますし、
リンパの停滞も解消されます。

このように、虚血圧迫することで改善する点は自覚していない隠れた要素も含めて、数多くあります。